2015/12/03

「菅野潤さんが語る “ふるさと Home” ~そして復興と文化~」WAY10月号記事より

しおがま文化大使で、現在、パリを拠点に活動している菅野潤さん(ピアニスト)に、これまでの活動から故郷しおがまについて、復興、そして未来についてのお話をうかがいました。(対談日 2015年9月18日)

菅野潤さんと当センター館長 本田幹枝

活動30周年を迎えて、ふるさと塩竈を想う

館長  本日は貴重なお時間をありがとうございます。
           さて、菅野さんは演奏活動30周年を迎えられたと伺っております。おめでとうございます。
    今、どのようなお気持ちですか?

菅野  とても感慨深いです。ひとつの新たな出発点として、この頃むしろ気持ちが新鮮。
    若返ったような気持ちで、将来に向けて進んでいきたいと思っています。

館長  海外でお過ごしの中で、ふるさと塩竈をどのようにご覧になりますか?

菅野  塩竈は以前は〈魚のまち〉というイメージが強くありました。しかし一方で文化的な
    風土もあって、産業と文化が結びついています。例えば食もひとつの文化で、
    良質な海産物から良質な食文化が生まれました。一方で塩竈には写真家や俳人もおられ、
    市民の文化への関心も高いので、私もふるさとでできるだけ活動したいと考えています。

ほんとうのまちの豊かさとは

館長  震災復興に向けて、菅野さんにはご支援いただきました。学校へのアウトリーチや
    遊ホールを会場とした様々な音楽活動、コンサートをボランティアで行っていただきました。
    今、まちをあげて復興に取り組んでいますが、塩竈は復興から発展について、どのような
    可能性があるとお考えでしょうか。

菅野  塩竈の事情を深く理解しているかはわかりませんが、2つ思いました。ひとつは産業と
    文化は別々のものではなく、一緒になって本当のまちの豊かさであり、不可欠なもので
    あると思います。ひとつの例として、3年前から参加しているフルダというドイツの小都市で
    行われている音楽祭があります。ドイツと日本は似ているところがあって、伝統ある中小
    企業、同族企業が健在ですが、フルダではそれらが文化を強く応援していて、市民がその
    動きに促されるように催しに参加しているのが非常に印象に残りました。塩竈も昔から
    産業があるので、それと文化が一緒に発展していくことが塩竈を魅力あるまち、人を
    惹きつけるまちにつながっていくことが一つ。もう一つは若い人の育成ということです。
    アウトリーチで浦戸を含め、市内の学校に出向きました。若い人たちは、いろいろな良いもの
    に触れて、刺激を受け、将来の道を開いていってほしいと思っています。

菅野潤さんの塩竈での活動について

クラシック音楽を身近に感じてほしい

館長  私も何度か同席させていただきましたが、おっしゃる通り、子どもたちが本物に
    触れる機会では、間近で演奏を聴いている子どもたちの表情がいきいきと変化
    していくところが印象に残っています。
     さて、エスプでの活動を振り返りますと、2001年の写真家・平間至さんとの
    〈ピアノセッション〉や2006年から数年続けていただきました〈公開ピアノレッスン〉に
    ついて、思い出やエピソードがあればお願いします。

菅野  平間さんとは父親同士が親しくして居ましたので、子どものころから知っていました。
    分野を越えたコラボレーションは、今は世界的にも多くなってきていて、昨年、パリの
    グラン・パレで催された北斎の大回顧展にちなんで、同じ時期にパリの日本文化会館で
    〈北斎とドビュッシー〉と題して、映像と演奏、また対談などが行われています。
    その先駆けと言いますか、今ほど行われていなかった時代にこのような企画を行ったと
    いうことが、非常に思い出に残っています。東京でも同じ内容で行いましたし、
    とてもよい企画をさせていただいたと思っています。
    それから、〈公開ピアノレッスンとミニコンサート〉ですが、一つは音楽の楽しさと奥深さを
   知ってもらいたいと思い、塩竈の子どもたちを対象に試みたものです。子どもさんたちも
   聴きに来た人も、いきいきと音楽の表情が変わっていくことを喜んでいたと思いましたし、
   ミニコンサートも身近に音楽を聴くということ、日本ではクラシックのコンサートというと、
   敷居が高いものと思われる方が多いですが、垣根をとって気楽にコンサートを体験して
   いただきたいと思い、それが少しはできたかなと思いました。


しおのまち音楽祭の一環で開催された玉川小学校でのアウトリーチ

復興の絆

館長  以前、エスプで開催した〈公開ピアノレッスン〉では、菅野さんのレッスンで
    子どもたちのピアノの音色がみるみる変わっていくのを実感し、
    本当に素晴らしいと思いました。
     ここで、再び復興支援の話になりますが、昨年度はじめて〈しおのまち音楽祭〉を開催し、
    その一環として災害公営住宅の集会施設で、ザルツブルクの方々と一緒に演奏
    していただきました。振り返っていかがだったでしょうか。

菅野  ザルツブルクの皆さんには、震災の年の秋にもボランティアでおいでいただき、
    遊ホールで演奏していただきました。おかげさまで〈しおのまち音楽祭〉に発展しまして、
    地域に出向いて演奏させていただいたことが、非常に演奏する方の心にも残りました。
    ちょうど雪のちらちら舞う日でしたね。あの後、ザルツブルクの皆さんからは、
    このような震災復興の企画を継続していきたいという希望がありました。あの時、お集まりい
    ただいたみなさんとの心の交流が生まれ、聴いていた皆さんも感動してくださったと
    思いますが、私たちも深く胸に残るというか、忘れがたい交流が出来たのかなと
    思っております。

災害公営住宅で開催したコンサートの様子

 






今後も塩竈での活動を継続

館長  そうでしたね。聴いている方には感動して涙を浮かべている方もいらっしゃいました。
    〈心の復興〉のための素晴らしいご支援をいただけたと思っております。
     さて、来年(2016年)3月には〈公開ピアノレッスン〉をグレードアップした〈ピアノ
    クリニック〉を予定していますが、今のお気持ちをお聞かせください。

菅野  先ほど申し上げた、若い人たちへの励ましや刺激が大切と思っています。その一つの
    活動としての〈ピアノクリニック〉ですので、ぜひ皆さんとの間に心の交流ができる
    ことを願っていますし、〈公開ピアノレッスン〉から5年ほど間があいていますので、ここで
    再開して続けていけたらと願っております。

館長  最後にしおがま文化大使の菅野さんから、メッセージをお願いします。

菅野  塩竈はこのたびの震災で被害にあわれまして、物質的にも心の上でも困難な時期を
    過ごされていると思います。しかしながら、塩竈というまちは素晴らしい文化があり、
    可能性を秘めているところだと思います。ぜひ、私たちのまちに自信を持とうではないかと
    思っていて、積極的にみんなで力を合わせて将来に向かっていきたいし、私も微力ながら
    お手伝いさせていただきたいと思います。

館長  心温まるメッセージをありがとうございました。これからのますますのご活躍を
    ご期待申し上げます。ありがとうございました。







菅野 潤
 パリを拠点とし、国際的に活躍するピアニスト。世界の音楽界で信頼を集め、著名な演奏家との共演も多数。国際コンクールの審査員やマスタークラスの講師としても世界各地に招かれている。
 松江市に生まれ、3歳で塩竈市に移り住む。桐朋学園大学音楽科卒業。現在パリを拠点として各国で活躍。帰国時には国内での活動にも精力的に力を注ぎ、地元の音楽文化復興に貢献している。
 
 
 

初出 ふれあいエスプ塩竈公民館だよりWAY2015年10月号
 

 

 
 

菅野潤ピアノクリニック2016

小中学生を対象にした公開ピアノレッスンです。募集終了
 
公開クリニック日 平成28年3月19日(土)14:00~  
開催場所     遊ホール(壱番館5階)
 
 

 
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